スピリチュアルケアとは

スピリチュアルケアとは、心の中の深い所からの叫びを聴き、その痛みを理解し和らげ、落ち着いて受け入れることができるように援助することです。

「これまで一生懸命生きてきたのに、なぜ私にこんなことが・・・」
「どうして子供がこんな病気になったの? なぜ?」
「歳を取るってつらいなあ! これまでは何でも自分でできたのに・・・」
「こんな思いをしてまで、生きている意味があるのだろうか?」

病気や事故などで苦しみを味わい、歳とともに身体が衰えて思うようにならないつらさを体験した時、人は誰しもこのような問いや、心の奥底からの叫びを口にするでしょう。
これらはみなスピリチュアルな叫びです。臨床スピリチュアルケアワーカーは、これらの問いや叫びに耳を傾け、その痛みや困難な状況を共有しようと心を傾けます。

ベッドに寝ている一人の女性が私に言いました。
「私、何か悪いことしたかしら」
「普通に生活してきたのに、こんな病気になるなんて」

短い言葉の中に、心の叫びが聞こえます。叫びの奥に重荷を背負ってじっと耐えている姿が浮かんできます。誰かに変わってもらうことなんか出来ないことだとは十分知っているのです。「でも、何故?」という問いが心の奥から湧いてくるのです。

「へんね。家族を送り出して独りの時間が欲しいって思っていたのに、今は独りが怖いの」
そう、独りはさらに心を暗くし、重荷をさらに重く感じさせます。このまま、じっと独りで耐えなければならないのかと思うと苦しいのです。

「こんなこと、言っていいのかなあ」
いいんです。声に出していいのです。心の外に出してみることで、見えなかったもの、気付かなかったことに触れることが出来るかもしれません。

『どうぞお話しください。私は聴いていますよ』
そこには、人の存在が不可欠なのです。
スピリチュアルケアはその方自身の心の奥の叫びを聞き、ご自身の中に内在している答えを引き出すために援助(ケア)することをいいます。聴く側の人が答えを出したり、何かを与えるのではありません。
また床に伏せている人だけのケアではありません。老いや人間関係で自分を見失いそうなとき、自ずと心は叫びをあげるのです。
ケアする人の役目は、例えていえば「お産婆さん」や「鏡」といえるでしょう。私たちはケアをする人を「臨床スピリチュアルケアワーカー」と名付けました。

欧米では、病院やホスピスは勿論のこと、スピリチュアルケアを受けられる環境やシステムがあります。日本はまだスピリチュアルケアの理解が少なく、誰にも言えず抱え込んでしまう人も少なくありません。